春の陽光がきらめく日に
大好きなアイドルの初主演舞台の円盤を、届いて数日後に棚の奥に押し込んだ。
発売を心の底から楽しみにしていたのは本当で、発売延期が発表されたときは悲しかったし発売日を数日後に控えた日に発送完了メールが来たときは胸が弾んだ。
自宅に届いたその日に全編視聴した。
安い表現だけど凄く凄く凄く感動した。
自担のビジュアルがめちゃめちゃ良かったとかグループの大事な節目をやっと見れたとかそういった部分もあったけれど、純粋に滝沢歌舞伎というエンターテインメントの壮大さに心を揺さぶられた。
届いた翌日にはジャニヲタじゃない姉を家に呼んで熱い解説付きで鑑賞させたし、その翌日にはほぼジャニーズから離れかけている友達を呼んで鑑賞させた。
なのにその翌々日には、後何百回でも観れると思っていた円盤は棚の一番奥に仕舞われていた。
余裕がなかった。
体調を崩して、それが原因で採用が決まっていた仕事に行けなくなってしまったのがきっかけだった。
メンタル面が豆腐以下に弱いのは元からで、それでも今までは落ち込んだ時やつらい時にアイドル達のパフォーマンスに元気をもらっていた、もう無理だと思っても何度も立ち上がらせてもらっていた。
でも今回はそれを遥かに超える大きな感情の波にのまれてしまって、自分でコントロールできる領域を超えていた。
眩しくて輝いてる彼らをみること自体が辛くなってしまった。
どこかで彼らの人生と自分の人生を比較してしまっていた。
こんなにも誰かの感情を動かせる、求められる輝かしい人生と、自分すら満足させられない人生。
彼らの努力をパフォーマンスの端々から感じる度にそんな考えばかりが頭をよぎった、自分がとことん恥ずかしくて情けなくて、こんな自分にはファンを名乗る資格がないとすら思った。
初めて観た時とは明らかに違う意味で泣いた後、円盤を目につかない場所にしまった。
純粋に円盤を楽しめている周りのオタクをみることも辛くて、SNS類を全てログアウトした。
インスタのストーリーもTwitterも全部見ずに、LINEの通知すら切って過ごした。
周りのオタクとの考え方の差を感じることにも疲れてしまって、誰の意見も聞きたくなかった。
ひたすらドラマを観たり放置気味だったあつ森をしたり、彼らを好きになって初めて彼らから距離を置いた。
でもそのすぐ後に、友人の佐久間担から一緒に歌舞伎を観よう、という連絡が来た。
正直凄く迷った。今の自分が歌舞伎をみて純粋に楽しめるだろうか、彼らが血の滲むような思いで創り上げたものを真っ直ぐに受け止めきれるだろうか。
全く自信の無いまま快諾の返事をした。
友人がドキュメンタリーを未視聴ということもあり、一緒に本編を一通り見てその後ドキュメンタリーとスペシャルインタビューを視聴した。
彼女はドキュメンタリーを観ながらボロボロ泣いていた。元々わたしも彼女も人一倍感情移入しやすいタイプなので自担じゃなくても何でも泣くことが多い。正しい表現かはわからないけど、彼女は本当に担タレの正しい例だと思う。
2019年5月5日の公演のシーンが来て、画面の中で最年長が泣いていた。隣の友人も泣いていた、わたしも泣いていた。久しぶりの感覚だった。
先述した通りわたしも大概涙腺が弱い人間なので、自担の表情ひとつで色んな感情が溢れて泣くことはよくある。でもこの時はただただ自然と涙が出た。泣かないだろうと思っていたので内心めちゃくちゃビックリした。
「僕だけでは守れないんです だから、皆さんも力を貸して下さい」
貸すよ、めちゃめちゃ貸すよ、って声に出しかけた。
あなた達がステージに立って、ステージを楽しめる為ならいくらでも力を貸すよ、その気持ちがあまりにもストンと胸に落ちてきて、急につっかえてたモヤが取れた気がした。
彼らの努力は彼らだけのものだとこれまでずっと思っていた。
マメが潰れて血が滲むくらいバチを握ったことも、スランプに陥りながらステージでひとり歌い続けたことも、遠く離れた地で一人きりで練習に明け暮れたことも、カメラに笑顔を向けることも出来ないほどの疲労と闘っていたことも、本人達の努力だけで彼らはステージに立っているんだと思っていた。
でもそんな彼らですら、何度も修羅場を超えてきた彼らですら、あなた達の力がないと駄目なんだと言う。ファンの皆さんのおかげです、彼らを応援してきて何度も聞いた言葉が今になって染みた。
この公演の当時わたしはまだ彼らのファンでは無かったからこの発言に直接結びつきはしないけど、だったらわたしが彼らを好きだ、こういうところが好きだと色んなところで発言していたことも、周りの人に彼らの良さを布教してまわったことも、想いが溢れて何度も送ったファンレターのひとつひとつも、今の最高に強くてかっこいい彼らに繋がっているのかもしれないと思った。烏滸がましいかもしれないけど、そう思えた。
わたしがファンとしてやってきたちっぽけな努力が、彼らの人生に少しでも輝きを添えられるなら、わたしの人生にも十分意味があると思えた。
今、WITH LOVEを観ながらこのブログを書いている。
かけがえない時間を ともに生き
いつも 心は 繋がってる たとえ
遠く 離れていようとも
忘れないよ この思い
ありがとうと言えるよ 目の前の
君に 真っ直ぐ 伝えたくて そうさ
ずっと 僕らは 同じ道
行けることを信じてる
初めにこれを聴いた時、『僕ら』は新しく9人体制になった彼ら自身を指しているような気がしていた。
そこに少しでもファンの存在を感じさせてくれる彼らが今、心から大好きだと思える。
わたしの大切で大好きなアイドル、Snow Manが初座長を務めた『滝沢歌舞伎ZERO』の円盤は、部屋の一番目につく場所に飾られている。
2020.08.03